RPEを活用した筋トレ方法
※「RM法」をご存知ではない場合、こちらの記事『お役立ちアイテム「RM換算表」』からご覧ください。 |
私のトレーニングのモットーは「余力を残さず限界までやりきる」ことでした。
実際、このモットーのお陰で数年で身体は大きくなり、筋力もグンと伸びました。
しかし、そんな事は何年も続くことはなく・・・。
連日、限界までトレーニングを続けたことで身体の節々を《痛める↔治す》の繰り返し。
筆者は現在アラフォー。
認めたくはないですが、10代、20代は怪我をしても、疲れ切ってもすぐ治りましたが、今はそうはいきません。
成長→怪我→停滞→成長→怪我→停滞…
この負のサイクルを続けていけば、いずれ非可逆的(もとに戻らない)な大怪我を負うことは間違いない。
そう思うようになり、限界までやる精神を抑えて、余力を残すトレーニングに切り替えました。
そのベースとなった考えがRPEを活用した筋力トレーニングです。
《目次》
RPEとは
Rate of Perceived Exertion(自覚的運動強度)
→運動時の主観的負担度を数字で表したもの。
つまり「今の運動がどれくらい大変だったか」を数字で表したものです。
このRPEはリハビリでよく使われます(例:Borg Scale)。
そしてこれを筋力トレーニング向けに応用されたものが以下の表です。
例題を通して使い方を説明していきます。
例題)
A君がスクワットを行いました。
重量は100kg、回数は5回、挙げました。 友達のB君が質問します。 B君「やろうと思えば、あと何回挙げられた?」 A君「あと1回は出来たね」 B君「2回は出来ない?」 A君「2回は微妙なところかな」
Q.A君のRPEを、上の表を参考にお答えください。
《ヒント》1回は出来る。でも2回は、出来るかもしれないけど、出来ないかもしれない。 |
A.RPE8.5
この質問で、A君が余力をあと1~2回分残して終わらせたことがわかりました。
しかし、それを知った所で?
次の例題を通して更に深掘りしていきましょう。
RPEからRMを求める方法
Repetition Maximum:最大反復回数(ギリギリ持ち挙げられる回数)
RMとは?
例)「スクワットの5RMは100kgです」
→「スクワットでギリギリ5回持ち挙げられる重量は100kgです」という意味になります。
RMを知るには、設定した重量を何回持ち挙げられるか挑戦するか、例えば何RMでも記録がわかっていれば、そこから”推定”RMを予想できます(例えば5RMがわかっていて、そこから推定1RMを導き出す)。
どちらの方法を選ぶにせよ、RMをもとにトレーニングをするには、自身のRM記録を知っている必要があり、これからトレーニングを始める方や、トレーニングに不慣れな方の多くはそれをわかっている人はいません。
また、ギリギリの回数を知ろうとする以上は怪我のリスクが伴います。
そんな時は、RPEから推定RMを導き出す方法があります。
例題)
スクワット
Q.これをRMに換算すると『何%1RM』でしょうか?下の表を参考にお答えください。 《ヒント》REPS(回数)=5/RPE=8.5 |
A.82.4%1RM
- 重量:100kg
- 回数:5回
- RPE:RPE8.5
=82.4%1RM→約7RM(下図参照)
つまりA君は『100kgだったらギリギリ7回持ち挙げられる能力がある』と予想されます。
ちなみに100kgが7RMの場合、A君の推定1RMは120kgくらいです(下図参照)。
100% | 95% | 92.5% | 90% | 87.5% | 85% | 82.5% |
1RM | 2RM | 3RM | 4RM | 5RM | 6RM | 7RM |
120 | 114 | 111 | 108 | 105 | 102 | 99 |
自身の正確なRMを知ることで、それをもとにトレーニングで扱う効果的な重量設定を行えます。
しかし、限界ギリギリの回数に挑戦するには怪我のリスクが伴います。そういう時はRPEからRMを予測して、そこからトレーニングで扱う重量を設定することをオススメします。
余力を残して身体は鍛えられるのか
ここまでの知識で、A君のRPEと、A君のRPEから推定RMを出すことが出来るようになりました。
話を整理していきましょう。
《まとめ①》
スクワット
に対してA君は「あと1回は出来るけど、2回は微妙」と答えたのでRPEは8.5 《まとめ②》 回数5回が、RPE:8.5の場合、100kgは「82.4%1RM(約7RM)」 |
Q.では「重量100kgはギリギリ7回持ち挙げられるにも関わらず、余力を残して5回で終えた」A君のトレーニングは、身体を鍛えるには効果的な刺激になるのでしょうか?
A.現時点の見解は、筋肉を発達(筋肥大)させる刺激は【RPE7~8】レベルで可能ということです。
ということは、今回のA君のトレーニングはRPE8.5だったので筋肉を発達させるだけの刺激としては十分以上だったということです。
別の視点からこの根拠が正しいのか検証してみましょう。
筋肥大に必要な刺激は一般的に70~87.5%1RMくらいと言われています。
- RPEで7~8レベル
- 70~87.5%1RMくらい
以上のレベルでトレーニングを行えば、筋肥大のための刺激は得られる。
これを踏まえて前項の表と比べてみるとどうでしょうか。
RPE7~8で、一番低い強度は65.3%1RM。
最も高い強度で81.1%1RM。
つまり1回のセットで5~8回(REPS)、RPE7~8の範囲で収まるトレーニング(70.7~81.1%1RM)を行えれば筋肥大に必要な刺激は十分に得られるということがわかります。
上記の条件を満たせば、限界まで追い込まなくても、余力を残したトレーニングで筋肉は発達するということです。
RPEから重量設定する方法
では実際に、RPEから重量設定を出来るようになってみましょう。
『1RPE=5%』
- RPEを「1」増やしたい場合:重量×1.05
- RPEを「1」減らしたい場合:重量×0.95
これを覚えておいてください。
以上をもとに例題を解いてみましょう。
例題)
スクワット
Q.次のセットをRPE7で行いたい場合、何キロで行えばいいでしょうか? 《ヒント》 ・RPE9→7に下げたい。 ・1RPE=5%→2RPE=10% |
A.108kg
120kg×0.9=108kg
108kgで5回スクワットを行えば、RPE9から7に下げてトレーニングを行えます。
逆に、RPEを「1」上げたい場合は126kgで5回行えばRPE9から10に上げることができます(無謀ですが)。
この計算方法を覚えておくことでRPEをコントロールしながら適切な重量設定を行うことができます。
今の重量は「重すぎたな」「軽すぎたな」と思った際には上記をもとに計算してみてください。
先述した通り、RPEが7~8の範囲内で収まるトレーニングがベターということをお忘れなく!
RPEを活用した筋力トレーニング
RMとはギリギリ持ち挙げられる回数を指すので「7回ギリギリ持ち挙げられる重量が100kgだから」という理由で100kgを7回持ち挙げるトレーニングを行えば当然ギリギリの勝負になり、出来たり出来なかったり怪我をすることがあったりと、得することがありません。
そこで、重量と回数を決める簡単な方法をご紹介します。
- 70%1RM(12RM)の重量で、8~10回でトレーニング
- 75%1RM(10RM)の重量で、6~8回でトレーニング
- 80%1RM(8RM)の重量で、4~6回でトレーニング
- 87.5%1RM(5RM)の重量で、1~3回でトレーニング
- 92.5%1RM(3RM)の重量で、1回でトレーニング
例えば8RMの重量で8回トレーニングをしたとすれば、RM=ギリギリ挙げられる回数なので必然的にRPE10になります。なので、8RMの重量で4~6回にとどめておけばRPE7~8くらいになると考えられます。
トレーニングの重量と回数を簡単に決めることが出来るのでオススメです。
回数に関しては少ない回数から始めましょう。そこで足りない、または重すぎると思ったら先述した計算式で重量を再設定したり、回数を増減して調整してみてください。
いつも限界ギリギリでトレーニングしていた方にとっては、物足りないと感じるかもしれません。実際、筆者もそうでした。しかし、限界ギリギリのトレーニングを続ければ、短期的にみれば著しい成長が見られるかもしれませんが、長期的にみれば慢性的な怪我や非可逆的(もとに戻らない)な大怪我を負うことも考えられます。
先述したとおり、追い込まなくても筋肉はつきます。騙されたと思って、まずはやってみてください。
しかし、これからお話する方にはRPEの使用は推奨できません。
RPEの使用を推奨しないケース
RPEはとても有用なツールに聞こえたと思いますが、このツールも万能ではありません。
使用に不向きな方がいます。
①心理的(精神的)限界が低い方
「もう出来ない、もう無理だ、限界だ」トレーニング中にこう感じることはありますか?
実際はもっと出来るのに辛くてやめてしまう方
身体はとっくに限界なのに、更に追い込んでしまう方
「限界」と感じるところを心理的(精神的)限界といいますが、この限界を感じるポイントは人によって様々です。
この心理的(精神的)限界が低い方、つまり怠け癖のある方にRPEはオススメできません。
例えば、本当はRPE6なのに「9だった」と偽ってしまう恐れがあるからです。
また、心理的(精神的)限界とは違った要因にはなりますが「見栄っ張りの人」もRPEの使用はオススメできません。
例えば、本当はRPE10なのに「7だった」と偽ってしまう恐れが同様にあるからです。
どちらの場合でも、正確なRPEがわからないため、適切な重量や回数ではないトレーニングになります。
②トレーニング初心者
「あと何回はできる、できそう」と正確に判断するには、ある程度自分自身の能力を把握している必要があります。
トレーニングを始めたての方の場合、その基準が不安定なので客観的に自分自身を評価することが難しい場合があります。
トレーニング初心者の方にRPEの「使用を推奨しない」というよりは「使用の際には注意」してください。
投稿者プロフィール
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理学療法士として幾多の臨床経験を経て2020年に『RE-ALL FITNESS』を設立。
もともとは体重100kgオーバーの大食漢。腕立ても腹筋も出来ない男がアメリカンフットボールに出会ったことをきっかけにトレーニングを始める。やめてからはパワーリフティングに転向し、トレーニングに明け暮れる2児の父親。
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