[前編]肩痛と前鋸筋~ベンチプレス好き必見~

肩が痛い時にやるべきトレーニングとストレッチ

・肩の痛みの発生要因として関連性の高い部位

・その部位をターゲットとしたトレーニング及びストレッチ方法

主にこの2項目について解説・紹介させていただきました。

 

本稿は、その中で出てくる『前鋸筋』について、もう少し掘り下げて解説し、日常生活やトレーニング(特にベンチプレス)で肩痛に悩まれている方への予防・改善法を加えた『肩が痛い時にやるべきトレーニングとストレッチ』のアップデート内容になっています。

長編のため前編・後編にわかれています。

今回はその前編です。

※サクサクと読める内容ではありませんが『なぜ肩痛が起きるのか』『なぜこのフォームでトレーニングをするのか』など、根本を理解することが改善への近道と筆者は考えます。また、トレーニングにおいても本質を理解している人と、していないで形だけ真似している人では効果はまったく変わります。是非、2度3度ご覧いただけますと幸いです。

はじめに

肩の痛みの発生要因として関連性の高い部位は4つです。

  1. 前鋸筋
  2. 僧帽筋(下部線維)
  3. 小胸筋
  4. 関節包(後方)

【ポイント1】

  • ①前鋸筋/②僧帽筋(下部線維)は筋力強化
  • ③小胸筋/④関節包(後方)は柔軟性向上

肩甲骨の動きと肩痛

肩甲骨の動きは

  • 内転↔外転
  • 下方回旋↔上方回旋
  • 挙上↔下制

があります(下図参照)。

その他にも、あまり知られていない動きとして

  • 前傾↔後傾
  • 内旋↔外旋

の動き(下図参照)と併せて、肩甲骨は10種類もの動きを出すことができます。

 

そして今回のテーマ『肩痛と前鋸筋』に密接に関係してくる肩甲骨の動きが後傾外旋です。

そして、肩痛のある人は特に肩甲骨の『後傾』に制限があります

【ポイント2】

  • 肩痛と密接に関係してくる肩甲骨の動きは『後傾』と『外旋』
  • 肩甲骨『後傾』の動きに制限があると、肩痛が出やすい。

肩痛と肩峰下スペース

日常生活(腕をあげると痛い・横に寝ていると痛い等)やベンチプレスをしている時の肩痛の原因として疑われるのはインピンジメント症候群です。

肩甲骨には肩峰という部分があり、その肩峰と腕の骨(上腕骨)の間には、肩を安定させる腱板や、それを守る肩峰下滑液包が通るスペース()があります(下図参照)。

インピンジメント症候群は、この肩峰下スペースが狭くなることで”腱板”や”肩峰下滑液包”が、肩峰と上腕骨の間に挟まれたり、摩擦によって炎症や痛みがおきている状態です。

更に悪化すると、腱板の損傷・断裂のリスクが上がります。またこの状態が長く続くと、骨の周りに骨棘といって”トゲ”のようなものが出来てしまい、痛みは更に増します。

肩峰下スペースと肩甲骨の後傾

ここで、今までのまとめです。

①肩峰下スペースが狭くなると肩痛がおきる

②肩痛のある人は特に肩甲骨の『後傾』に制限がある

③肩痛と密接に関係する肩甲骨の動きは『後傾』と『外旋』

④肩痛との関連性が高い部位は『①前鋸筋/②僧帽筋(下部線維)/③小胸筋/④関節包(後方)』

┃┃

肩甲骨が前傾していると肩峰下スペースが狭くなる肩痛がでる(腕が挙がらない)

肩甲骨が後傾していると肩峰下スペースは広がる肩痛がでない(腕が挙がる)

・肩甲骨の前傾(後傾の動きを抑制)に働く筋肉:小胸筋

・肩甲骨の後傾(前傾の動きを抑制)に働く筋肉前鋸筋僧帽筋(下部線維)

【ポイント3】

  • 肩峰下スペースを広げる肩甲骨の動きは『後傾』
  • 肩甲骨の後傾に働く筋肉:前鋸筋・僧帽筋(下部線維)
  • 肩甲骨の前傾に働く筋肉:小胸筋

※小胸筋が硬くなっていると肩甲骨が前傾しやすくなり、後傾の動きを制限する。

また、猫背・巻き肩などの姿勢の悪い人や、デスクワークの人、その他にもトレーニングでベンチプレスなどの押す種目の頻度が多い人などは、関節包(後方)の動きに制限(伸びない)が出ている可能性が高いです。

これも同様に肩甲骨や上腕骨の動きを制限し肩痛をおこす原因となります。

そのため小胸筋と関節包(後方)が固まって動きが悪くならないように、積極的に動かして、積極的に伸ばしてください。

小胸筋と関節包(後方)のストレッチはコチラ(↓)をご参照ください。

※今回は『肩痛と前鋸筋』がテーマとなるので、それ以外の部位については割愛させていただきます。

前鋸筋とは

前鋸筋は肋骨から始まり、肩甲骨の前面に付着する筋肉です。

前鋸筋の主な働きは肩甲骨の外転と上方回旋、そして先述したとおり肩甲骨の後傾と外旋の働きをもち、肩峰下スペースを適正な位置に保つことで円滑に肩関節が動くように機能しています。

また、前鋸筋は上図から見て分かる通り、肩甲骨と肋骨の間に付着しているので、肩甲骨を肋骨に押し付けておく機能をもっています。

これらの機能が後編でお話するベンチプレスに深く関わってきます

【ポイント4】

【前鋸筋の機能】

  • 肩甲骨の後傾と外旋
  • 肩甲骨が肋骨から離れないように押し付けておく

前鋸筋の機能によって肩峰下スペースは常に適正な位置に保たれ、肩関節が円滑に動くように機能しています。

そして、その機能が破綻したとき肩甲骨の運動に異常がおきて肩痛を誘発します。

前編はこれでおしまいです。

後編は肩甲骨の運動異常からスタートです。

[後編]肩痛と前鋸筋~ベンチプレス好き必見~

投稿者プロフィール

Yutaro Masuda
Yutaro Masuda理学療法士
理学療法士として幾多の臨床経験を経て2020年に『RE-ALL FITNESS』を設立。
もともとは体重100kgオーバーの大食漢。腕立ても腹筋も出来ない男がアメリカンフットボールに出会ったことをきっかけにトレーニングを始める。やめてからはパワーリフティングに転向し、トレーニングに明け暮れる2児の父親。

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