食欲を抑えるホルモン「レプチン」

食欲、そして体脂肪の増減に密接に関係してくるホルモン「レプチン」

そのレプチンとは何なのか。

今回はそのお話をしていきます。

レプチンとは

レプチンとは、食欲を抑制してくれるホルモンです。

「お腹が一杯!」と教えてくれることから、満腹ホルモンとも言われています。

そして、レプチンは脂肪細胞から分泌されます。

つまり、脂肪細胞から分泌されるということは、体脂肪があると食欲が抑制されやすく、体脂肪がないと食欲の抑制が難しくなると言えます。

「え!?体脂肪があると食欲が抑制されるの!?」

 

体脂肪があると食欲が抑制!?

体脂肪が食欲を抑制するということに驚かれたと思いますが、大事なことなので何度でも言います。

我々の食欲を抑制してくれるレプチンは脂肪細胞から分泌されます。

ということは、体脂肪が蓄積されることでレプチンの分泌量は増えます。

しかし、肥満状態にあると「PTPRJ」というレプチンやインスリンの働きを抑制する酵素分子が多量に発現します。

そうなるとレプチンの分泌量が増えても、その働きはPTPRJによって抑制されて食欲抑制が強く生じません。

それがレプチン抵抗性(レプチンの働きが鈍くなっている状態)の要因になっていると考えられています。

こうなると止まらない食欲で、生活習慣病まっしぐらです。

 

ダイエットの第一関門は

ダイエットの第一関門はスタートです。

前述のとおり、レプチンは脂肪細胞から分泌されます。

つまりダイエットが始まり、体脂肪が減ればレプチンの分泌量も減ります。

また、ダイエット開始初期ではレプチン抵抗性(レプチンの働きが弱まっている)も高い状態です。

そのためダイエット開始初期には、レプチンの働きが弱まっていることに加えて、レプチンの分泌量低下も重なり、強い空腹を感じやすくなります

これがダイエットが難しい要因の一つです。

ですが、ダイエットを継続していけば、次第にレプチンの分泌量や働きが正常化していき、食欲の抑制機能が正常に働くようになります。

では、どれくらい継続すればいいのでしょうか。

 

第二関門は、まさかの

“食べて”「食欲を抑える」テクニック」でお話した、食欲を調整する3つのセンサーとは異なり、レプチンは体脂肪の増減に大きく影響をうけます。

そのため、ダイエットが上手くいって体脂肪が減少すると、食欲抑制の反応が得づらくなり、食欲のコントロールが難しくなります。

ではダイエットをどれくらい継続していけば食欲は出なくなるのでしょうか。

答えは「そんな日はこない」です。

 

トレーニングを継続させる方法」でもご説明していますが、飢餓(体脂肪減少)は生命を脅かすものであるため、身体にはそれを防ごうとする働き(体脂肪を増やそうとする働き)が充実しています。

逆に体脂肪を減らそうとする働きは充実していません。

体脂肪の減少→飢餓状態→生命を脅かしている状態→「食べて体重を増やせ!」

と、脳は判断、命令するのです。

本来、肥満状態から適正体重に戻すこと、運動習慣のない人が適切な運動を行うことは「健康的な生き方」です。

しかし、人の本能というのは「健康的な生き方」ではなく「生きる(生命を維持する)」ことです。

つまり「健康的な生き方」が生命維持のために必要とされているのであれば「眠たい」「お腹が減った」といった自然に出てくる生理的欲求のように、体重が増えたら「ダイエット欲」が出たり、運動不足だったら「運動欲求」が自然と出るはずです。

しかし、そういった生理的欲求はありません。

なんなら、色々な心の働き(ホルモンの働き)で「やろう!」という意志を阻止してきます。

本題に戻りましょう。

ある研究ではダイエットの開始前にレプチンとグレリン(空腹感を出すホルモン)の分泌量を測り、ダイエット1年後に再計測。

その結果は、レプチンの分泌量が減少し、グレリンの分泌量が増えていたという結果でした。

つまり、食欲は落ち着くどころか増していたということです。

これが先述した、生命を維持しようとする人の本能の強さの裏付けになります。

つまりダイエットの第二関門はまさかのダイエット成功後ということです。

「せっかく頑張った体型をこのままキープしたい」という意志とは裏腹に、本能レベルでは体重を増やすために我々の意志に対して容赦なく攻撃してきます。

これが、リバウンドを起こす要因です。

何万、何億年後も豊食の時代が続き、人類の大半が常に生活習慣病に罹っていたら、もしかすると「ダイエット欲」や「運動欲求」が本能として追加されるかも?しれませんね・・・。

食欲を抑えるためには

1.早食いはNG

食事をして血糖値が上昇することでレプチンが働き出しますが、食べ始め20~30分後から活性化すると言われています。

しかし、ダイエットをしている方は食べる量自体が少ないので、物理的に30分前後かけて食べることが難しいと思います。

そういった場合は、咀嚼行為だけでもレプチンのトリガーになるので、食事の前にガムを数十分噛んでください。

2.睡眠不足はNG

睡眠不足だとレプチンの分泌量が減少すると言われています。

また、夜更かしや睡眠不足はグレリン(空腹感を出すホルモン)の分泌量が増加するので注意です。

6~7時間前後の睡眠をとるようにしましょう。

3.アルコールはNG

アルコールの摂取はレプチンの分泌量が減少すると言われています。

これにより空腹感が持続して食べ過ぎがおきます。

アルコールをとると、食べ過ぎてしまう原因はここにあります。

 

4.習慣的に運動をする

ダイエットを食事制限(摂取カロリーを減らす)だけで解決してはいけません。

必ず運動(消費カロリーを増やす)とセットで行いましょう。

ここでいう運動とは、消費カロリーを増やすという意味もありますが、筆者の意図は別にあります。

どれだけ強い意志があろうと、「食べなさい」という本能に勝ち続けるには無理があります。

もし本能に負けて食べてしまっても、食事制限だけでなく、習慣的に運動をして消費カロリーを増やし、筋肉をつけて基礎代謝を上げていれば、摂取カロリーに余裕をもって体重管理を行うことができます。

レプチンを増やす方法

残念ながらレプチンを食材やサプリからとることは出来ません。

ですがレプチンは、たんぱく質をもとに作られていますので良質な、たんぱく質を摂ること。

そして、レプチンを作るためには亜鉛ビタミンEも必要になるので、これらを摂ることがレプチン生成の補助になります。

ダイエットを行う方は、これらが不足しないように心がけてください。

投稿者プロフィール

Yutaro Masuda
Yutaro Masuda理学療法士
理学療法士として幾多の臨床経験を経て2020年に『RE-ALL FITNESS』を設立。
もともとは体重100kgオーバーの大食漢。腕立ても腹筋も出来ない男がアメリカンフットボールに出会ったことをきっかけにトレーニングを始める。やめてからはパワーリフティングに転向し、トレーニングに明け暮れる2児の父親。