『レッグエクステンション』に潜む2つのリスク
『レッグエクステンション』
脚の筋トレとして、スクワットやレッグプレスといったトレーニングに並んで
よく行われることが多いのが、レッグエクステンション
しかしながら、このレッグエクステンションには
2つのリスク(危険性)が潜んでいます。
今回の内容は専門職やトレーニング経験のある方向けではありますが
トレーニング経験の浅い方にも重要な内容ですので少し難しい話になりますが是非ご覧ください。
《目次》
レッグエクステンションとは
レッグエクステンションとは言葉の通り
『レッグ(脚)エクステンション(伸展)』する運動です。
実際は膝関節を伸ばすので『ニーエクステンション』と呼ばれることもあります。
ジムで『レッグエクステンション』といえば
上の画像のように、椅子に座って行う運動ではなく
下の画像のように、マシンに座って膝を伸ばす運動を指します。
レッグエクステンションで鍛えられる筋肉
レッグエクステンションで鍛えらる部位は、太ももの前側にある筋肉です。
→大腿四頭筋(大腿直筋/中間広筋/内側広筋/外側広筋)
1つめのリスク『パフォーマンスの低下』
短距離走者と長距離走選手にレッグエクステンションを行わせた実験があります。
筋肉量やパワーという観点でみたらこの実験、短距離走者に分があるように思えます。
その結果は?
筋力に『それほど差がなかった』
なぜこのような結果で終わってしまったのか。その原因は、短距離走者は
『レッグエクステンションを行う時にハムストリングスが強く収縮してしまう』ことにありました。
→ハムストリングス:大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋
ここで《おさえておくポイント!》
●大腿四頭筋は『膝関節の伸展(膝を伸ばす)』に働きます。
●ハムストリングスは『膝関節の屈曲(膝を曲げる)』に働きます。 |
つまりレッグエクステンションは膝を伸ばす運動なのに
短距離走者はハムストリングスも強く働いてしまうため
膝を伸ばす動作にブレーキがかかり、良い結果が出せなかったということです。
短距離走者はレッグエクステンションが弱い
スタートダッシュやジャンプなど、素早く爆発的に動く動作では
ハムストリングスや大殿筋が強く働きます。
また、これらの筋群は同時に膝関節の怪我(靱帯や関節の損傷)
を予防するのに、とても重要な働きをします。
そして、先述した短距離走者や、バレーボール選手、お相撲さんなどは
これらの筋肉がとても発達しています。
(逆にこれらの筋群の発達レベルが低いと、スポーツパフォーマンスが落ちたり、怪我をするリスクが上がります)
そして先程の実験から読み取れることは、おそらく
スポーツで常日頃から大腿四頭筋とハムストリングスを協調して上手く使っているため
レッグエクステンションで、大腿四頭筋のみならずハムストリングスも働いてしまったとうことが考えられます。
以上の事から、これらのスポーツを行う者がレッグエクステンションがそこまで強くない
というのはスポーツ特性を考えれば『問題ない』むしろ『良い』ということが言えます。
目的次第ではおすすめ出来ないトレーニング
先述した理由から、スポーツ特性を考慮すると
レッグエクステンションを一生懸命頑張って行い続けた場合
『大腿四頭筋とハムストリングスの協調した働き』のバランスが崩れるリスクが示唆されます。
つまりそのスポーツのパフォーマンスが低下するかもしれないということです。
2つめのリスク『膝の怪我』
膝をよく怪我する方、痛めている方、または特に女性は
『レッグエクステンション』を注意して行わなければいけません。
コレを紐解くには脳の発達を読み解く必要がありますが
話が長くなるので、このポイントだけ抑えてください。
大腿四頭筋は『無意識的に働きやすく、活動が早い』
ハムストリングスや大殿筋は『意識的に働かせる必要があり、働きづらく、活動が遅い』 |
膝を痛めやすい原因とは
立ち上がる時、座る時、ジャンプや着地する時など
下半身に強い力を入れる時や、強いストレスが加わる時には下の図のように
大腿四頭筋(太ももの前側)とハムストリングス(太ももの後ろ側)が協調して働くことで
膝関節の安定性を上げ、強い力を発揮できるようにしています。
しかし、先述した特性の通り、大腿四頭筋はハムストリングスより無意識に働きやすいため
多くの方が、走る時や座る時、ジャンプして着地する時などに大腿四頭筋を優位に働かせてしまいます。
そうするとどういうことが起きるのでしょうか。テントの張り縄をイメージしてください。
片側の縄を強く引っ張り、反対側の縄を緩めればテントは一方に傾きます。
この現象が膝関節にも起きます。
大腿四頭筋が強く収縮してハムストリングスがあまり働かないと
紫色の矢印の方向に骨(脛骨)がズレるような力が働いてしまいます。
これを繰り返し行えば、膝関節のクッション材である半月板や
膝を支える靱帯はボロボロになっていきます。
大腿四頭筋の活動に性差がある
女性のほうが男性よりも前十字靭帯損傷のリスクが2~8倍高いことがわかっています。
これには大腿四頭筋の活動が関わってきます。
この要因として挙げられている問題点の一つとして
『男性と比べて大腿四頭筋の筋活動が亢進している(活発に活動している)』ことです。
この特性により、先述した『膝を痛めやすい原因とは』の理由も合わさり
女性が積極的にレッグエクステンションを行うと
スポーツや日常生活で膝を痛めてしまうリスクが上がることが示唆されます。
また、大腿四頭筋を優位に働かせてしまうことから
女性は男性と比べてハムストリングスが弱化しているケースも多いと言われています。
レッグエクステンションを上手に利用する
レッグエクステンションを行うオススメのタイミング例(ボディビルは除く)は
●膝の怪我や手術をした際の『リハビリ』
●スクワットやレッグプレスなどの運動を行う前の『膝の準備体操(ウォームアップ)』
●スクワットやデッドリフトなど腰部を酷使した後に『もう少し大腿四頭筋を使いたい』と思った時
など
レッグエクステンションで抑えるべきポイント
①高重量で行わない(コントロールできる範囲の重さで行う)。
②反動を使わない。 ③高回数で行う(12~20回程度)。 |
ここに更に加えるとしたら必ず『大殿筋やハムストリングスもセットで強化する』ことです。
投稿者プロフィール
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理学療法士として幾多の臨床経験を経て2020年に『RE-ALL FITNESS』を設立。
もともとは体重100kgオーバーの大食漢。腕立ても腹筋も出来ない男がアメリカンフットボールに出会ったことをきっかけにトレーニングを始める。やめてからはパワーリフティングに転向し、トレーニングに明け暮れる2児の父親。
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