健康寿命を縮める『歳だから』マインド

健康に関する悩み

その中でも加齢に伴い生じてきた、筋力や体力の低下を主要因とした行動制限

しかし、これは本当に歳をとったことが原因なのでしょうか。

臨床で感じる私の”主観的“な考えを今回、記事にしました。

基本動作を侮るなかれ

「筋トレ(運動)をしましょう」

歳だから・・・

 

幾度となく、この言葉を聞いてきました。

 

人の平均寿命は年々上がっていますが、健康寿命はそれに見合っていません。

平均寿命とは言葉の通り、人の寿命です。

健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されています。

そして、下図の通り平均寿命と健康寿命には約10年前後も差があります。

【転載元】https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/21/backdata/01-02-01-01.html

図表2-1-1 平均寿命と健康寿命の推移

つまり、寿命を迎えるまでに、平均して約10年前後、健康上の問題で日常生活が制限された状態で生活する期間があるということです。

 

遊ぶ、旅行に行く、仕事をする、買い物に行く、トイレで用を足す、風呂で身体を洗う、2階に行く

食事をとる、料理をつくる、服を着る、服を脱ぐ、車を運転する・・・

我々は日常の中で数多くのことを行っていますが、意味や目的が何であろうと根本的なことを言えば、立つ、歩く、持つなどの基本動作を複合的に行っているだけです。

 

そしてこれらの基本動作に1つでも制限が出たとき、人は目的とする行動の多くに制限が出ます。

 

では

立つのが大変になったら、どのようなことに制限が出てくるでしょうか。

歩くのが大変になったら、どのようなことに制限が出てくるでしょうか。

体力が落ちてきたら、どのようなことに制限が出てくるでしょうか。

日常生活を変わらず送ることが出来るでしょうか。

 

これらを踏まえて、冒頭の話に戻ります。

「筋トレ(運動)をしましょう」

『歳だから・・・』

この会話、おかしいと思いませんか?

 

人は基本動作に制限が出てきたとき、健康寿命の終わりに向かって”加速”していくのです。

言い換えれば、基本動作を行う能力を維持(向上)する努力を習慣的に行えば、身体(器官)の機能は年齢に関係なく発達します。

【ルーの法則】

人の器官や機能は、適度に使えば発達し、使わなければ退化・萎縮する。

それなのになぜ『歳だから』と言って、運動(筋トレ)を避けるのか。

ここからは私の”主観的な考え”です。

言い訳が縮める健康寿命

『歳だから』

これはある一定の年齢に達した方々が使う、行動を避ける時の言い訳だと考えます。

 

もっと若い時には

『時間がない』『忙しい』『面倒だから』

といった言葉で運動(筋トレ)を避けていたはずです。

それが『歳だから』という言葉に置き換わっただけではないでしょうか。

 

人は何か面倒なことを避ける時、合理化という防衛機制が働きます。

『忙しいから仕方がない』

『歳だから仕方がない』

それは、もっともらしい言葉で、自身の行動を正当化しようとする働きです。

 

身体の節々が痛い時には

『(膝が、肩が、腰が)痛いから仕方がない』

といって運動(筋トレ)を避けます。

 

不毛な合理化は今日でおしまいです。

 

整形外科、リハビリ、整骨院…

待合室に並んでいる方に、幼稚園生、小学生、中学生、10代、20代の人は殆どいません。

それはなぜでしょうか。

 

「若くて健康だから」

違います。

 

健康という資産が”まだ“豊富なだけです。

つまりその資産を無駄に消費だけする生活習慣を行えば、遅かれ早かれ破産(病気、関節の痛みなど)します。

今ある、健康という資産を増やすも減らすも”行動”次第です。

現に3、40代で生活習慣病の方が年々増加しています。

そして、人の死因の50%以上が生活習慣病と深く関わりのある病気です。

 

行動を避ける理由を探せばいくらでも出てきます。

しかし、今ある健康に関連する問題(制限)を解決する方法はすでに出ています。

 

今まで避けていた、そして今も避けていることに解決の答えがあります。

そして、今までの生活習慣が健康寿命を縮めています。

 

ご自身の力で病院やクリニック、整骨院や整体院に行けるのであれば”第一”に優先することはマッサージやストレッチ、電気や温熱治療ではありません。

我々が今こうして基本動作を行えるようになったのは、赤子の頃からマッサージやストレッチを受けていたからでしょうか。

毎日、毎日、試行錯誤をしながら動作を行い、真似て失敗を繰り返して習得した動作です。

自転車に乗れないから、ストレッチをする。

これくらい見当違いなことをしているのです。

自転車に乗れないなら、自転車に乗る練習をしてください。

 

つまり今、何かしらの動作に制限が出たり、感じているのであれば、その動作を制限する組織を鍛えたり、伸ばす運動をしてください。その方向性を決めるために理学療法士やトレーナーがいます。

ご自身の意思で身体を動かすことが難しい場合を除き、マッサージやストレッチは単体で行うべきものではありません。運動と併用して行うものです。それは痛みに関してもです。

まずは能動的な行動です。

オススメ種目

具体的にどのような運動(筋トレ)をすればいいのかは個人差があるので、ここでは

人の力を借りずに(何とか)日常生活動作をおくれている方

②歩く、立つなどの能力を維持、向上させたい方

に向けてオススメ種目を2つ、ご紹介します。

しかし、どのようなトレーニング種目にも効果に対するリスクがあり、当然その場には動作をチェックするトレーナーもいないため、可能であればまずは専門家のサポートを1回でも受けることを推奨します。

①坂道or階段

登り坂、階段の昇りは膝関節への負担が少ないですが、降りは真逆で関節への負担が上がります。

そのため出来るならば、階段の昇り動作だけを繰り返し出来るステアクライマーというマシン(エスカレーターのようなマシンです)があるジムに行くといいです。

このマシンがない場合は、トレッドミル(歩くマシン)の傾斜を最大に近いくらい角度をつけて、手すりを持たずに歩いてください。

 

ジムで何をしていいかわからない。

でも健康でいたい(歩く、立つなどの動作を苦労なく行いたい)。

そういった方にはステアクライマーまたは傾斜角度を最大にしたトレッドミルがご自身で管理する運動の中では最適です。

 

しかし、ジムのハードルは高いと思いますのでまずは、近場の坂道や階段で行いましょう。

そして、のぼりのペースを上げて、くだりはペースを落としてください。

 

【注意点】

下記の画像(左上図/左下図)のように坂道や階段を昇る際に、つま先方向と膝のお皿の方向がズレると膝関節にネジレの力が加わり、膝を痛めるリスクが高まります。

特に多いのが、膝が内を向いて(二ー・イン)、つま先が外を向いた(トゥ・アウト)状態で地面を蹴る危険動作です。

そのため、右上図、右下図の画像のように、つま先の方向と膝のお皿の方向が一致するように階段を昇るように心がけてください。

(余談ですが、自転車を漕ぐ時も上図のエラー動作を行う方がいます。自転車で膝を痛めた、痛い方はここに気をつけてみてください)

 

そしてトレーニング強度に関しましては、毎回同じ距離、同じペースではなく、日によって強弱をつけてください。

例1)坂道5往復を15分で行う。明後日は坂道5往復を14分で行う。

例2)1週目:階段10往復を3日間行う/2週目:階段11往復を3日間行う

 

②ハードル・サイドステップ・オーバー

【ハードル・サイドステップ・オーバーの方法】

任意の高さに、ビニール紐や毛糸などの柔らかい物を、セロハンテープなどの剥がれやすいテープで貼り付けます。

貼り付ける場所は、椅子を2つ並べた所、ドアの縁などが良いでしょう。

また、万が一バランスを崩して倒れそうになっても、すぐに手をつけられるように壁の近くや、動かない椅子やテーブルなどの近くで行ってください。

環境が整ったら、その紐の横に、横向きで立ってください(上図参照)

つま先だちになります。

つま先だちの状態を維持したまま、その紐を交互にまたぎます(3~5セット、8~10往復を目安に行ってください)。

その際は下図(◯)のように、軸足(赤線)になる股関節と膝関節はしっかりと伸ばします。そして背筋をまっすぐに保ちます。

①のように膝関節や股関節、背中が曲がった状態でまたいではいけません。

そして、またぐ方(黄色線)の股関節を、へその高さくらいまでしっかりと曲げて、足裏は地面の方を向くようにまたいでください。

②のように、股関節を殆ど曲げず、膝関節ばかりを曲げて、足裏が地面の方ではなく天井のほうに向けてはいけません。このような動作を行うと骨盤が反り返り、腰を痛めてしまいます。

 

「はじめてだから」といって障害物の高さを低く設定しすぎると、これらのエラー動作は出やすくなります。

膝より上、目標は大腿骨の真ん中くらいの高さでも跨げるように頑張ってみてください。


ちなみに、健康増進レベルの場合、上半身は肩甲骨、肩関節の機能維持、向上に努めてください。

自宅で出来る種目で特にオススメなのはYTWLトレーニングです。

【関連記事】

「私がやるならこうやる」自宅トレーニング-背中編-

さいごに

Don’t let the old man in(老いを迎え入れるな)

 

私が好きな映画「運び屋」という映画の主題歌「Don’t let the old man in/Toby Keith」の一節です。

◎「Don’t let the old man in」歌詞和訳
Written and performed by Toby Keith Courtesy of Show Dog Nashville

老いを迎え入れるな
もう少し生きたいから
老いに身をゆだねるな
ドアをノックされても
ずっと分かっていた
いつか終わりが来ると
立ち上がって外に出よう

老いを迎え入れるな
数え切れぬ歳月を生きて
疲れきって衰えたこの体
年齢などどうでもいい
生まれた日を知らないのなら
妻に愛をささげよう
友人たちのそばにいよう
日暮れにはワインを乾杯しよう

老いを迎え入れるな
数え切れぬ歳月を生きて
疲れきって衰えたこの体
年齢などどうでもいい
生まれた日を知らないのなら
老いが馬でやって来て
冷たい風を感じたなら
窓から見て微笑みかけよう

老いを迎え入れるな
窓から見て微笑みかけよう
まだ老いを迎え入れるな

投稿者プロフィール

Yutaro Masuda
Yutaro Masuda理学療法士
理学療法士として幾多の臨床経験を経て2020年に『RE-ALL FITNESS』を設立。
もともとは体重100kgオーバーの大食漢。腕立ても腹筋も出来ない男がアメリカンフットボールに出会ったことをきっかけにトレーニングを始める。やめてからはパワーリフティングに転向し、トレーニングに明け暮れる2児の父親。