腱板断裂術後の機能評価報告!!

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上記記事の続報です!

 

私、2023年11月14日(火)に手術を行い、16日(木)に退院

17日(金)から完全自己管理でトレーニングを再開しました。

同年12月5日(火)に装具固定期間が終了し

術部(右肩関節)のトレーニングを本格的に開始しました。

 

遅ればせながら、今回は

  • 手術から93日目(2024年2月14日)の術部の機能
  • 手術から100日目(2024年2月21日)のトレーニング状況

をご報告します。

 

前置きとして、このご報告は

「術後の身体機能を、元の状態に戻すことは自己管理で誰でも出来ますよ」

とお伝えしたいのではありません。

 

「基本をおさえて、やるべきタイミングでやるべきこと

やるべき量をしっかりこなせば、腱板断裂術後の機能改善は

基本的に難しいことではありません」

 

当然、断裂の度合いや、元々の身体機能、年齢などによって

一緒くたに言えることではありませんが

「手術が怖い」

「手術が不安」

「手術で良くなるのだろうか…」

「手術をして後悔しないだろうか…」

と、腱板断裂手術を悩んでいる方の

判断材料の一つになればと思い

理学療法士である私が、私自身を被験者として

もちうる知識と技術を総動員して

術後から、人の手を借りず1人でトレーニングを行い

結果「どうなったのか!?」をご報告します。

 

機能評価(どれくらい動かすことが出来るのか)は

  • 術後21日(装具固定を解除した日)
  • 術後61日(2ヶ月)
  • 術後93日(3ヶ月)※術後3ヶ月の間が再断裂が最も高い時期

に撮影を行っています。

 

装具の固定を解除した、術後21日目から肩関節や肩甲骨の機能評価を行い

その中でも特に制限があった動きを以下に記載しています。

記載していない動作は、装具固定を解除した術後21日目からも特に制限がなかった動作です。

※装具固定を解除するまでの21日間も、1人で術部のトレーニングを連日行っています。動かさなかった日は1日もありません。

 

また、御覧頂いている皆様に伝わりやすいように

その機能評価を[★5段階]で独自に判定してみました!

★★★★★:問題なし、どんどんトレーニングしていこう!

★★★★☆:問題はないが、ここで満足せず、もう少し頑張ろう!

ーーー合格ラインーーー

★★★☆☆:日常生活では問題ないが、トレーニング復帰のためにまだまだ頑張ろう!

★★☆☆☆:日常生活では問題ないが、トレーニング復帰するには致命的な制限ですよ!

★☆☆☆☆:日常生活に支障がでるレベルですよ!

 

「腱板断裂術後の患者様は、どのような動作に制限を感じるのか

どのような痛みを感じるのか。そしてこれらをどうしたら回避、改善できるのか」

を、本当の意味でセラピストが理解することは、どれだけ臨床経験を積んでも

当事者にならなければ”真”に理解することはできません。

 

だからこそ、今回当事者になった私がやるべきことは

理学療法士として、この期間を最大限に楽しむ(学ぶ)こと。

なので、この機会に色々なことをチャレンジしました!

 

被験者が私自身なので勉強のために、再断裂に細心の注意を払って色々なことを行っています

そのため、以下の内容には再断裂リスクの高い動作が多々含まれます。

再断裂は術後3ヶ月の間に最も多く、術部の断裂の度合いでも再断裂率は大きく変わります。

  • 広範囲断裂:39.3%
  • 大断裂:27.7%
  • 中断裂:10.1%
  • 小・部分断裂:3.7%

当方は臨床経験を積んだ理学療法士であり、通常、術直後から完全自己管理でトレーニング(リハビリ)を行うことは、機能回復の遅延や最悪の場合、再断裂する可能性を高めます。

「自分でやろう」と思わず、専門家の管理、サポートのもと機能回復に努め、絶対に私の真似をしないでください。

 

それでは、前置きが長くなりましたが結果報告いってみます!

(手術をしたのは右肩です)

肩関節の屈曲

《術後93日目の評価:★★★★★》

問題なし、どんどんトレーニングしていこう!

肩関節の伸展

《術後93日目の評価:★★★★★》

問題なし、どんどんトレーニングしていこう!

肩関節の外転

《術後93日目の評価:★★★★★》

問題なし、どんどんトレーニングしていこう!

肩関節の水平内転(水平屈曲)

《術後93日目の評価:★★★☆☆》

日常生活では問題ないが、トレーニング復帰のためにまだまだ頑張ろう!

※術部(棘上筋)が伸ばされるため、再断裂のリスクが高い動作です。

 再断裂リスクの高い術後3ヶ月の間は、基本的に真似をしないでください。

肩関節の内旋/外旋について

肩関節の内旋、外旋の可動域(どれくらい動くか)をみる検査は、基本的にファースト・ポジション(1st)で評価されますが、その他にもセカンド・ポジション(2nd)、サード・ポジション(3rd)でみる必要もあります(理由は割愛)。

肩関節の外旋(1st/2nd/3rd)

《術後93日目の評価:★★★★☆》

問題はないが、ここで満足せず、もう少し頑張ろう!

肩関節の内旋(2nd)

《術後93日目の評価:★★☆☆☆》

日常生活では問題ないが、トレーニング復帰するには致命的な制限ですよ!

肩関節の内旋(3rd)

《術後93日目の評価:★★☆☆☆》

日常生活では問題ないが、トレーニング復帰するには致命的な制限ですよ!

結帯動作

《術後93日目の評価:★★★☆☆》

日常生活では問題ないが、トレーニング復帰のためにまだまだ頑張ろう!

 

結滞動作とは下記画像のように、背中に手を回す動作です。

※術部(棘上筋)が伸ばされるため、再断裂のリスクが高い動作です。

 再断裂リスクの高い術後3ヶ月の間は、基本的に真似をしないでください。

反対側の上肢(腕)に触れる動作

《術後93日目の評価:★★★☆☆》

日常生活では問題ないが、トレーニング復帰のためにまだまだ頑張ろう!

※術部(棘上筋)が伸ばされるため、再断裂のリスクが高い動作です。

 再断裂リスクの高い術後3ヶ月の間は、基本的に真似をしないでください。

まとめ

・肩関節の屈曲 《術後93日目の評価:★★★★★》
・肩関節の伸展 《術後93日目の評価:★★★★★》
・肩関節の外転 《術後93日目の評価:★★★★★》
肩関節の水平内転(水平屈曲) 《術後93日目の評価:★★★☆☆》
・肩関節の外旋(1st/2nd/3rd) 《術後93日目の評価:★★★★☆》
肩関節の内旋(2nd) 《術後93日目の評価:★★☆☆☆》
肩関節の内旋(3rd) 《術後93日目の評価:★★☆☆☆》
結帯動作 《術後93日目の評価:★★★☆☆》
反対側の上肢(腕)に触れる動作 《術後93日目の評価:★★★☆☆》
  1. 肩関節の水平内転(水平屈曲)
  2. 肩関節の内旋(2nd)
  3. 肩関節の内旋(3rd)
  4. 結帯動作
  5. 反対側の上肢(腕)に触れる動作

術後100日経過して残った制限は以上の5項目ですが

赤字以外3項目の動きに関しましては

術後3ヶ月は再断裂リスクが特に高い動作のため、基本的に禁止動作です。

そのため、この時期に多少の制限が出ていても焦る必要はありません。

事実、この記事を投稿している今は、まったくもって問題なく行えています。

 

しかし、赤字2項目に関しては、術前から可動域の左右差があり

術後の固定期間によって更に増悪しました(特に”肩関節の内旋(2nd)”)。

今後、トレーニングを本格的に復帰するためには要改善項目です。

ちなみに以下が、この2項目の制限因子と考えられます。

【肩関節の内旋(2nd)】

  • 小円筋
  • 後下方関節包
  • 棘下筋(下部繊維)

【肩関節の内旋(3rd)】

  • 小円筋
  • 後下方関節包
  • 後下関節上腕靭帯

それを踏まえたうえで今回、手術をしたことが原因で

新たに出現した制限や後遺症などは特にありません。

今の状況

【投稿日(2024年4月16日)の今現在】

日常生活レベルで困ることはなく

  • 子供を抱っこ&高い高い
  • 背中をかく&身体を洗う
  • 術部を下にして横になる など

重たいものを持ったり、持ち上げたり

肩の柔軟性が必要となる動作を行ったり

肩を圧迫したり、伸ばしたりと、問題なく可能です。

ただし術部がストレッチされると、まだ僅かに痛みは出ます。

 

トレーニングに関しては上記とは次元が異なるので

まだまだ、果てしなく長い道のりです。

術部(棘上筋)や、周辺組織の筋力や柔軟性が

安全にトレーニングを行うのに、まだまだ十分とは言えません。

 

その中でも特筆して制限のあるトレーニング(姿勢)は

何といっても”バックスクワット”です。

バックスクワットは今回の断裂の受傷機転(断裂したキッカケ)です。

この姿勢はそもそも途中まででも激痛で

“とろうとする”ことさえ、まったく出来なかったため

経過画像がございません。数百グラムの棒でさえ無理でした。

何とか20kgのバーベルを担げたのは術後126日目(2024年3月18日)のことでした。

どのトレーニングの中でも群を抜いて遅かったです。

 

今現在も、手幅を通常より広くして持ち、肩の負担が少ないように担いでギリギリ可能。

30秒も担いでいるとジンジンと痛みが出てくるので、かなり慎重に進めています。

ちなみに今は、脚は筋力的にまだまだ余裕ですが

90kgでセットを組むので限界です(スクワットMAX240kg)。

 

他の種目ですとベンチプレスが100kgまで

デッドリフトが170kgまで回復してきています。

スクワットと比較すると重量はアベコベですが

今はトレーニングが出来るだけで幸せです。

 

大事なのは過去の亡霊(記録や肉体)にとらわれず

今、安全にできるトレーニングで、最大限に負荷を求めること。

「前は何kg持てた」とクヨクヨ考えても仕方がないし

へそを曲げてトレーニング自体をやめたら、それこそ本末転倒。

怪我

これを、サボる言い訳の材料にするようになったら

「理学療法士なんて辞めてしまえ!」

と、私は自分を戒めることでしょう。

手術を悩まれている方へ

通常、腱板断裂の手術を行う方の一般的な最終目標は

「日常生活に戻る」ことだと思います。

そういった意味では、私の場合は術後3ヶ月以内に完全に戻ることが出来ました。

 

しかし

  • 術後、腕が挙がらなくなった
  • 術後、肩の痛みがずっと残っている
  • 術後、生活が大変になった など

本来、腱板断裂の手術はポジティブな状態になるために行う手術のはずなのに

ネガティブな状態になってしまった内容の書き込みをネットで沢山見ませんでしたか?

事実、私自身もそういった方々のサポートを数多くしてきました。

 

あえて厳しいことを言います。

そうなってしまった原因は手術のせいではありません。

自身にあります。

 

私の受傷機転(断裂したキッカケ)はトレーニング中でしたが

一般的に腱板断裂の受傷機転で多いのは四十肩や五十肩といった

肩関節周囲炎が原因となった腱板断裂がとても多いです。

肩関節周囲炎とは

わかりやすく言えば運動不足が原因で肩の動きが悪くなった状態です。

この運動不足が祟って断裂するのです。

 

つまり、手術をしたことでネガティブな結果や印象をもっている場合

その多くは、手術をして肩の機能が悪くなったのではありません。

手術前から、すでに肩の機能は悪かったのです。

そして、術後の固定期間で更に悪化したのです。

 

その状態から始めるリハビリの大変さは私の比になりません。

土台となる肩の柔軟性や筋力が著しく低下しているからです。

ましてや、術後は毎日、複数回、肩を動かす時間を設けなければいけません。

 

「忙しい、時間がない、面倒、痛いから」と言って

(正しく)沢山動かそうとする意志がない方には腱板断裂手術は絶対に推奨できません。

 

  1. 術前は、必ず起きる術後の機能低下に備えて、可能な限り筋力トレーニングやストレッチを行う。
  2. 術直後は痛みのない範囲で(愛護的に)可能な限りストレッチをしたり、術部以外の関節を積極的に動かして廃用を防ぐ。
  3. 装具固定期間が終わったら段階的に筋力トレーニングやストレッチを積極的に行う。

 

こういったプロセスをふんで、術部の機能を回復していきます。

休んでいる暇はないのです。だからこそ、受動的ではいけません。

医者は切れた腱を再建するところまでが仕事です。

その再建した腱の機能を戻すのは医者やセラピストではなく自分自身です。

 

なぜだと思いますか?

 

多くの方は入院期間は数週間から長くても1~3ヶ月です。

仕事をしている場合はもっと短い期間になるでしょう。

例外的ではありますが、私で2泊3日です。

入院していればリハビリが午前、午後に1回40分~1時間ほどあります。

しかし、退院すれば外来でリハビリに来るのは週に1回。2回あればいい方です。

週に1回、1回40分~1時間

この程度のリハビリでよくなるわけがありません。

 

スポーツで考えてみてください。

週に1回、1回40分~1時間の練習で上手くなれますか?

つまり、それ以外の6日間は自分自身で動かすしかないのです。

 

セラピストの仕事は、何をすべきか、何に注意すべきかなど

進むべき方向を指すことです。

だからこそリハビリにおいても、いつまでたっても内容が変わらず

マッサージやストレッチしかしないセラピストが担当だった場合

担当または施設を必ず変えてください。

 

術前術後、無駄に過ごしていい日はありません。

その無駄にした期間を取り戻すには同期間では到底足りません。

その何倍の期間を必要とします。

だからこそ、術前に出来る限りの準備と想定をしてください。

術後に困ったこと&オススメグッズ

手術をお考えの方に術後に私が生活で困ったことをお伝えします。

  • くしゃみや、不意に術部の肩に力が入ると、チクっとした力が抜けるような結構な痛みがあった。
  • 装具の脱着時、着替えるとき、お風呂に入るときなどは上記理由で、緊張感と恐怖心が凄い。
  • 暫くは、お風呂で背中や、元気な方の腕が一人で洗えないし、拭けない。
  • お手洗いが大変。
  • 私は左利きなので問題はなかったですが、利き腕が手術する側だと食事や歯磨きなど生活が大変になる。
  • 歯のお掃除(フロス)が両手で出来なくなるので、フロスホルダーを買った。
  • 代わりの装具はないので、どれだけ汗をかいても四六時中使わなければならない不快感がある。
  • 寝るときも装具をするので、まぁまぁな不快感の中で寝ることになる(寝ている時に無意識に装具を外していたことが多々あった)。
  • 装具を固定する肩や腰のベルトが、皮膚と擦れたり、食い込んできて痛い。
  • 一方で、寝る時は装具の固定力が立っている時ほどないので、しっかり肩や肘のポジショニング(厚手のタオルを挟む)をしないと、かなり痛い思いをする。

上記の項目で

装具を清潔に保ちたい場合は以下の方法がオススメです!

 

【アイテム①アームスリーブ】

装具は以下の画像のように固定しています。

そのため、特に腕と装具が接触するので汗が気になる方は

アームスリーブを用意しましょう!

これがあると装具と肌が直接当たらないのです。

冬でしたら長袖だと思うので必要ないですが、春、夏頃に装具をつける場合は

メッシュ素材のアームスリーブがあると不快感を軽減できますよ!

 

【アイテム②ベルトカバー】

装具の種類にもよりますが

私の装具は肩と腰で固定するタイプだったので

この接触部に、結構な汗をかきます。

はじめの頃はタオルを巻いていたのですが

動くと落としたり、ズレて何度もつけなおし、とても面倒でした。

妻にお願いしてベルトカバーを作ってもらいました。

 

【アイテム③パッドカバー】

脇が閉まると術部が再断裂する可能性が非常に高いため

脇が開いた状態になるように装具には厚手のパッドが装着されています。

そのパッドは脇腹に当たっているのですが

その部分がまぁまぁ暑く、結構汗をかきます。

ベルトカバー同様、売っていないので

妻に「こういうものが欲しい」とお願いしてパッドカバーを作ってもらいました。

妻が裁縫が得意で本当に助かりました。


次に、お風呂。

お風呂に装具はつけて入れないので

通常、大きいペットボトルを脇にはさんで入るように指導されます。

ですが、これは体験した者だからこそわかることですが

ちょっと肩に力入るだけで痛いのに、こんな不安定な物を脇に挟んで

しかもそれが濡れたり、石鹸がついたらとんでもなく滑る恐怖感

これが滑って脇から落ちたらと考えたら・・・。

そこで私は事前に考えていました。

子育ての経験がこんなところで役立つとは。

 

「幼児用の浮き輪って丁度よくないか?」と思い

妻に「もう捨てちゃった?」と聞いたら、まだあるとのこと。

さっそく浮き輪の穴に腕を通して、肩までもってくる。

肩掛けバックを担ぐように浮き輪をもったら、とんでもないくらい良い!

濡れても問題ないし、浮き輪だからペットボトルと違って柔らかい。

それに、すごい安定します!これは是非、使ってほしい!!

ただ、どうしても石鹸がつくと滑りやすいのでそこだけはご注意を!

次に、背中や反対の腕に手が届かないので「孫の手」があると便利です!

あと、食事では「先割れスプーン」があると持ち替える手間が減っていいですよ!

最後は「長い棒&長さ調整ができる棒」があると、自宅のリハビリで凄い使えます!

ちなみに私は2mの塩ビ管を自宅用に用意して、リハビリで使いました。

先述の通り、リハビリに関しては担当セラピストによく相談してください!

 

正しく動かして、肩の機能を回復させましょう!

投稿者プロフィール

Yutaro Masuda
Yutaro Masuda理学療法士
理学療法士として幾多の臨床経験を経て2020年に『RE-ALL FITNESS』を設立。
もともとは体重100kgオーバーの大食漢。腕立ても腹筋も出来ない男がアメリカンフットボールに出会ったことをきっかけにトレーニングを始める。やめてからはパワーリフティングに転向し、トレーニングに明け暮れる2児の父親。