入院1日目(手術まで)の記録

【前回】手術までの記録 の続きです!

11/13(月)~手術前夜1~

この日、21時以降はOS1(500ml×2本)以外、摂取禁止となる。

 

20時59分

「最後の晩餐をしてもよろしいですか!?」

 

お客様のインターバル中に、プロテインとマルチビタミンを摂取させていただく。

栄養面はこれで仕上がった。

22時頃

手術前、最後の業務を終える。

 

夕飯を食べたのに「摂ってはいけない」と言われると異様にお腹が減ってくる。

「明日の朝ごはんはなにー?」と妻に言いそうになる。

11/13(月)~手術前夜2~

入院の準備が済んでいない。

入院中は基本的に病衣とリースのタオル。

自前の衣服やタオルがいらない。

行きと帰りの服装は同じでよし。

 

  • 携帯の充電器
  • Bluetoothイヤホン(これ大事)
  • 懐中電灯
  • コップ
  • 歯ブラシ
  • トレーニング用にセラバンド(ゴムチューブ)とハンドグリップ(握力を鍛える道具)
  • 暇つぶし用の本
  • 下着
  • 小銭 等

スッカスカのカバン

エコバックに入り切るレベルだ。

 

はじめての入院、こんなもんで大丈夫・・・か?

不安はあるが、長居する気はない。大丈夫だ。

 

お腹が減った。もう寝よう。

時刻は0時をまわっていた。

11/14(火)~出陣~

朝5時

テンション高めで起床。

アメフト試合当日の朝を思い出す。

 

朝ごはんはない。飲水もだめだ。

残ったOS1をチビチビ飲む。

 

続々と起きてくる子どもたち。

朝食の匂いで猛烈にお腹が減る。

 

手術をしたら暫く両手を使ったことが出来なくなる。

「もういいよー」

と、言われても子供たちと戯れ、抱っこし、ハグしまくった。

長男を小学校に送りだした。

さて、私の番だ。いくぜ!

退院したら着る用の前開きパジャマをプレゼントしてもらった時に記念にパシャリ

手術が近づいていくにつれて、私の写真は腕を使ったポーズばかりになっていた。

病院、到着

8時45分頃

妻の運転で病院に着く。

 

病棟に入る前に、PCR検査を行う。

 

陰性

 

手続きを済ませて、病室に入る。

昔はリハビリで患者様を迎えに何度も入った病室。

今度は私が患者として入る。

慣れた風景なのに立場が変わると見方も変わる。

 

「おはよーございまーす!リハビリでーす!」

「ますださんの声は病棟の端にいても聞こえるよ」

と、看護師さんに言われた程、声の大きな私。

耳の遠い患者様にも聞き返されることは殆ない。

 

今は、悪いことをしているわけではないのに、小声で妻と話す。

「え?なんて言った?」

聞き返された。

決まる

看護師さんが来た。

「13時30分に手術が決まりました」

 

その時間までに身体を仕上げておかないとな。

やはり、今日の私の気分は手術ではなく試合。

心拍数が上がり、ウォームアップが始まる。

 

大きな物は持ち込めない。

持参したハンドグリップ(握力を鍛える道具)とセラバンド(ゴムチューブ)。

あとは自重を使って、右の指、手首、肘、肩、肩甲骨周りを順番に入念に仕上げる。

手術が大変になるくらい筋肉をパンプアップしてやろうとフザケた感情が湧く。

 

とは言うものの、私の右腕は夕方頃には確実に動いていない。

そう思うと、無性に愛おしくなり動かしたくなる。

だんだん疲れてくる。

が、水は飲めない。

動けば動くほどお腹も減る。

気づいたら、ハンドグリップを握ったまま私は寝ていた(そうだ)。

点滴

感覚的には10分くらいと思ったら40分程寝ていた(そうだ)。

そうこうしていると、点滴が始まった。

確実に試合の時間は迫っている。

 

病棟看護師さんからの問診と説明

麻酔科医さんからの問診と説明

オペを担当する看護師さんからの問診と説明

そしてオペを担当する先生からの問診と説明

 

先生に言う。

「20日(月)退院ってボードに書いてありましたけど、明日帰りますよ先生!」

 

『本当に言ってるのー!?痛くて無理だと思うよ~』

 

「手術が終わったら、そこからは私が頑張るしかないんですから大丈夫ですよ」

押し問答が続く。どちらも頑固だ。

 

「とりあえず明日退院の予定で!」

 

『わかった!予定ね!予定!』

 

お互い、ニヤリとした表情で話を終える。

入室して、はじめこそ暇を持て余しトレーニング、昼寝をかましていたが、その後はあっという間に時間が流れていく。

READY

12時過ぎ、妻が昼食を終えて戻ってきた頃だった。

「そろそろ着替えましょうか」

看護師さんが言う。

 

手術着という名のユニフォームに着替える。

そして弾性包帯をつけて試合に呼ばれるまで待つ。

サイズが小さくて短い着丈。そこに真っ白な弾性包帯。

色々と面白い状態になる。

今の私は不安よりも好奇心が勝っている。

こんな体験は中々出来ない。

「全てを記録しなくては」という、なぞの使命感が湧く。

撮影会が始まった。

出陣

試合まで30分をきった。

 

「手術前、手術後の記録をお願いね」

「手術から帰ってきて意識がなくて、酸素マスクがつけられた状態でも、必ず記録を残しておいてね」

妻にお願いする。

 

ここで試合前、最後の右腕のウォームアップが始まる。

「これでお前とは暫くサヨナラか・・・」

遠距離恋愛のアベックのように、右腕とのしばしの別れを惜しんだ。

 

13時25分

「ますださん、いきましょうか!」

元気な看護師さんが試合開始のホイッスルを鳴らす。

選手入場

オペ室までは点滴台を押しながら自分の足で行く。

ロッカールームからグラウンドに向かっている気分だ。

今、私の頭の中には”ロッキーのテーマ”が流れている。

 

道中

私は左手で点滴台を押し

自然と右腕を挙げて歩いていた。

気分はスタンハンセン

もう設定が無茶苦茶だ。

 

「行ってきます!」

ここで妻と別れる。

最後の記憶

オペ室の前室の扉が開くと目の前には観客ではなくストレッチャーがあった。

現実に戻る。

 

「では、ここに寝てください」

 

横になると、周りにいた看護師さん達が私を一斉に取り囲む。

まな板の上の鯉

あれよあれよと準備が済む。

 

「じゃあ行きますよー」

ウィーン

このストレッチャーの動く音を聞いたことがある。

火葬場の電動台車の動く時の音にそっくりだ。

あまり良い気分ではない。

 

オペ室に入る。

そこからは雑談をしながら、オペの準備に入る。

 

「では、ゆっくり深呼吸してください」

酸素マスクが口元をふさぐ。

麻酔が始まっていないのに、天井が回ってきた。

 

「じゃあ麻酔を入れていきますよー」

点滴から麻酔が流れてくる。

 

私が最後に聞いた会話

「腕用、入らないから、脚用の持ってきて!」

どうやら血圧計が入らなかったようだ。

 

麻酔にあらがう術もなく、その会話を最後に私の意識は突然飛んだ。

 

【つづく】入院1日目(術後から)~2日目(朝まで)の記録

投稿者プロフィール

Yutaro Masuda
Yutaro Masuda理学療法士
理学療法士として幾多の臨床経験を経て2020年に『RE-ALL FITNESS』を設立。
もともとは体重100kgオーバーの大食漢。腕立ても腹筋も出来ない男がアメリカンフットボールに出会ったことをきっかけにトレーニングを始める。やめてからはパワーリフティングに転向し、トレーニングに明け暮れる2児の父親。